「会津の義 幕末の藩主松平容保」執筆裏話

  • 2019.05.21 Tuesday
  • 11:52

 今回の本を書くに当たって、容保公の行動は記録を追えばすんだのですが、なぜ、そんな行動に出たのか、いつ、その判断を下したのか、その時、どんな心情だったのかを描くのが歴史小説家の役目です。

 たとえば徳川慶喜が鳥羽伏見の戦いの後、幕府艦隊の旗艦である開陽丸に乗って、江戸に逃げ帰りましたが、その時、容保公と、その弟で桑名藩主の松平定敬を同行しています。なぜ、ふたりは唯々諾々とついていってしまったのか。それが長年の私の疑問でした。その点について、早乙女貢先生に質問したことがありました。すると先生は「将軍に命じられたら、ついていくしかない」とのことでした。

 容保公には有名な肖像写真(下)があります。一見、優男で、将軍に命じられたら、いかにも拒めなさそうな雰囲気です。でも彼の行動を調べていくと、ただの優男ではないことがわかります。鳥羽伏見の戦いでは、ちゃんと本人が伏見の前線に出て、先陣を努めています。鳥羽方面の先陣は定敬でした。むしろ会桑が突っ走って、慶喜が嫌々ついていった気配があります。

 つまりは容保は、けっして軟弱な優男ではなく、かなり強気のリーダーだったはずで、そういうイメージにのっとって今回の「会津の義」を書きました。将軍の敵前逃亡に同行せざるを得なかった状況も、読めば納得していただけると思います。とはいえ、なにぶんにも、あの写真のイメージが強いので、私の描く強い容保像に、読者が違和感を持たないか、その点には不安が残りました。

 で、すべて書き終えた時に、担当編集者が「文庫解説は松平保久さんにお願いしてみましょう」と言ってくれました。会津松平家の今のご当主で、容保公の曾孫さんです。私の解説なんか引き受けてくださるのだろうかと、やや懐疑的ではありましたが、なんと、こころよく引き受けて頂けたのです。実は松平さんは、すでに拙作「大正の后」を読んでくださっていたのです。あの作品では、大正天皇の皇后さまが会津の復権に尽力された過程も、大きなモチーフのひとつでした。そこに共感して頂けたようなのです。

 とはいえ、歴史上の人物のご子孫は、たいがいご先祖さまを崇高な存在として見ていらっしゃるし、私の描く、悩んだり苦しんだりする人間的な容保像を、受け入れてもらえるかどうか不安でした。でも、しばらくして書き上がった解説を拝読して、私は感動すら覚えました。人間的な点のみならず、私が不安に思っていた写真とのイメージのギャップを、きちんとフォローしてくださったのです。とてもありがたい解説でした。詳しくは、ここで書くとネタバレなので、ぜひ本をご覧ください。

 それと最近、私の本のカバー絵は、ヤマモトマサアキさんにお願いすることが多いのですが、今回もかっこよく描いてくださいました。それも下の写真を元に、力強さを加えて頂けました。

 でも意志の強いリーダーだったと思って、下の写真を改めて見ると、たしかに、そうも見えてくる気がします。

 

 

今だから勧めたい「大正の后」

  • 2019.05.15 Wednesday
  • 16:55

 去年の9月に発売されたPHP文芸文庫の「大正の后」ですが、女性皇族が注目されている今だからこそ、読んでいただきたい作品です。大正天皇の皇后さまが主人公です。高円寺の農家で育って、父親が官軍として幕末の会津に出かけた九条道孝。会津復権の思いは、父から娘へと引き継がれたはずです。ご病気だった晩年の大正天皇を支え、とにかくすごい皇后さまです。未読の方は、ぜひ!

 

「帝国ホテル建築物語」が出ます

  • 2019.03.31 Sunday
  • 01:19

 月刊誌の「歴史街道」で2017年のはじめから1年半、連載させていただいた「果てなき図面 帝国ホテル建築ものがたり」が、「帝国ホテル建築物語」として単行本になります。発売は4月10日です。

 以前にもこのブログに書きましたが、この作品を書きたいと思ったきっかけは、2016年に出た文庫本「猫と漱石と悪妻」の取材で、明治村まで夏目漱石の家を見に出かけたことでした。

 せっかく来たのだからと、ほんのついでのつもりで帝国ホテルの旧館も見たのですが、その圧倒的な存在感と、とことんこだわったデザイン性に息を呑みました。これだけの細部に渡る意匠を、どうやってフランク・ロイド・ライトは日本人の職人たちに伝えたのか、また職人たちは、どうやって理解して形にしたのか。その疑問が、この作品の出発点になりました。

 帰宅してから調べると、出てくるわ出てくるわ。計画の大幅な遅れや、初代本館の焼失、ライトの不本意な帰国、極めつけはオープニング当日の関東大震災。次から次へと起きる苦難を乗り越えて、完成に至らせた努力には、ただただ頭が下がる思いでした。日比谷でホテルとして活用されたのが、たった44年だったことも意外でした。明治村に移す際にも、力をつくした男たちがいました。

 私は札幌に住んでいた頃、建築事務所で、まちづくりの仕事をしていたのですが、建築そのものには、まったくの素人です。作品を書くにあたって、何人もの専門家の先生方に、いろいろ技術的なことを教えていただきました。また「歴史街道」で連載の機会を与えてくださったPHP研究所の方々にも、心から感謝しています。さらに発刊にあたりましては、明治村の4代目村長、阿川佐和子さんに帯の言葉を頂きました。

 今回、連載をまとめるにあたって、新たにプロローグとエピローグをつけて、その間の1章から8章までは、当時の支配人だった林愛作とフランク・ロイド・ライトの弟子だった遠藤新の、交互の視点に書き直しました。きっと面白く読んで頂けると思います。ぜひ、ご一読ください。

 

文庫本の解説

  • 2019.03.02 Saturday
  • 14:30

 前回、お知らせした「繭と絆 富岡製糸場ものがたり」の文庫解説ですが、ここのところメキメキと売れている時代小説家、田牧大和さんにお願いしました。

 田牧さんとは一緒にゴハンに行ったりする仲で、最初に田牧さんから「彩は匂へど 其角と一蝶」という彼女の文庫本の解説を書かないかと声をかけて頂いて、ちょうど私の「繭と絆」がひと月おくれの刊行だったので、それなら、おたがいに書きっこしましょうということになったのです。

「彩は匂へど」は田牧さんらしい華麗な文体の時代小説で、其角と一蝶というのは松尾芭蕉門下の俳人と画人。主な舞台は深川ですが、琉球が関わり、江戸情緒に琉球の異国情緒が重なって、そこに謎が重層的に仕掛けられ、田牧ワールドを形成しています。作品の魅力を、うまく伝えられたかどうか心もとないけれど、がんばって書きました。

 一方、田牧さんは「文庫の解説は初めて」と仰せでしたが、とてもいい感じに作者の意図を読み取ってくれました。やや褒められ過ぎかしらという気もしますが、よかったら2冊とも、お目通しくださいませ。こうして並べて写真を撮ってみると、表紙も対照的でいいなあと、改めて感じ入った次第。

 

「繭と絆」の文庫版が出ます

  • 2019.02.28 Thursday
  • 09:31

3月10日に文春文庫から「繭と絆」が発売になります。2015年に単行本で出たものの文庫版です。単行本の時には裏表紙に描かれていた子どもたちが、表に出てきて、とてもかわいい表紙になりました。富岡製糸場の創業に、上野の彰義隊が関わっていたという件も描かれています。あまり知られていないことですし、主人公が若い女性で、その恋愛や友人関係も面白く描けたと思っています。未読の方は、ぜひ。写真は左が単行本、右が今度の文庫本です。

 

 

「燃えたぎる石」7年を経て重版!

  • 2018.12.10 Monday
  • 17:10

 2011年4月に角川文庫として出版して頂いた「燃えたぎる石」の重版が決まりました。この本は、ちょうど東日本大震災の直後に出たうえに、舞台が現在の福島県いわき市で、とても難しい出版でした。

 角川文庫の重版は小さいロットなのですが、それにしても7年も経ってから重版なんて、ちょびちょび売れ続けてくれたのだなあ、いわゆるロングセラーなのかなと、しみじみ嬉しいです。

 世間に知られていない地味な人物を描き続けてきたけれど、今年は「かちがらす」「ひとり白虎」「大正の后」に続く、思いがけない重版ラッシュ。植松三十里の名前で本を買ってくれるファンが、ちょっとはついてくれたのかなあと、改めて感謝しています。今後とも、よろしくおねがいします。

 よかったら私のホームページの↓「燃えたぎる石」のところも見てください。

http://30miles.moo.jp/2011/燃えたぎる石/

 

文庫版「大正の后」重版決定しました!

  • 2018.12.07 Friday
  • 20:37

 9月11日に発売になったPHP文芸文庫の「大正の后 昭和への激動」が重版になりました!

 今年は2月に出した「かちがらす 幕末を読み切った男」と「ひとり白虎 会津から長州へ」が、どちらも3刷。そして、また今度が2刷と、いい結果を出せました。今年は明治150年。去年から怒涛のように仕事が続き、もう息切れしそうでしたが、頑張りが結果に繋がりました。ありがたいことです。

 それと今、発売中の歴史街道2019年1月号で、第2特集の西郷従道に関して、少し書いています。

http://www.php.co.jp/magazine/rekishikaido/

 

「大和維新」その後

  • 2018.10.08 Monday
  • 15:23

 先月に発売になった「大和維新」は、いったん大阪府に吸収された奈良県が、ふたたび独立を果たす物語なので、やはり関西方面の書店さんでの動きがいいそうです。

 そんな中で、いつも新刊を献本している編集者から感想のメールが届いたので、添付します。

 

「ひとまず『大和維新』読後感のご報告。面白かったです! そりゃ馴染みがないどころか初めて知った名前が並びますが、「天誅組」がカギとなって、通常ならあり得ない出会いが重なる・・。歴史小説でしか味わえない興奮を味わいながら読み終えました。「できすぎた話だ」という読み方もあるでしょうが、私は大いに賛成します。(中略)今村勤三、いいですねぇ。こうした人たちがいたから、日本もなんとかやってこられたんですねぇ」

 

 やっぱり「面白かった」と言ってもらえるのが、何より嬉しいな〜。

 今村勤三の不屈の精神、きっと鼓舞されるものがあると思います。

 

「ひとり白虎」3刷が決まりました!

  • 2018.09.28 Friday
  • 16:07

 2月に描き下ろし文庫として刊行した「ひとり白虎 会津から長州へ」(集英社文庫)が、なんと3刷決定! ドラマがらみとかでない文庫で、重版だけでも初めてだったのに、3刷とは! 編集者も喜んでくれるし、本当に嬉しいです。白虎隊関係は強いのかなあ。ところで今年も会津祭に行ってきました。会津城天守閣での150年記念の展示は、とても見ごたえがありました。

 

新刊「大和維新」発売になりました。

  • 2018.09.22 Saturday
  • 08:16

新刊の単行本「大和維新」が昨日、新潮社から発売になりました。奈良県が大和国の誇りを保ちつつ、大阪府から独立する物語です。明治維新後、県境の線引に対する不満や見直しは、日本全国どこにでもあったことだし、多くの方に共感していただける内容だと思います。明治維新は、あの戊辰の一年間だけで達成されたのではないので、「大和維新」という題名をつけました。蓬田やすひろさんのカバー絵は、きっと大和の夜明けを表現しているのでしょう。

 

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