新刊「雪つもりし朝 二・二六の人々」が出ます

  • 2017.02.02 Thursday
  • 06:45

 2月4日に新刊「雪つもりし朝 二・二六の人々」が発売になります。「野性時代」で去年の5月号から、ほぼ隔月で連載した作品に加筆訂正をして、単行本化しました。

 最初に「野性時代」で何か連載をという話を頂いた時、私は描きたい題材を、いくつか編集者の方たちにミニプレゼンして、「どれにしましょうか」と振ったのです。すると、よりによって、いちばん手間ひま掛かりそうなものに決定してしまいました。つまりは2・26事件を、巻き込まれた人ひとりずつを主人公にして描く連作短編です。

 毎回、主人公も場所も変えて5つの物語を書くのですから、1回80枚の中編ながら、1冊分が書けるほどの調査と取材が必要で、それが5回。ずいぶんハードル高いなあとは思いましたが、もともと自分で出した企画だし、小説誌の連載は初めてだったので、全力投球でいこうと決めました。

 そもそも、なぜ2・26事件を書こうと思ったかというと、近年発行された2・26関係の本や雑誌の多くが、青年将校を擁護する雰囲気だからなのです。事件は、いわばテロ行為だし、それを擁護するのは、襲われた側が気の毒な気がしたのです。青年将校という呼び方にも違和感を覚えました。彼らの年齢は二十代後半から三十代なかばが多く、立派な大人です。それを青年と呼ぶことで、純粋性をアピールしているように思えてならなかったのです。

 殺されたひとり、高橋是清の住まいだった場所は、今は公園になっており、石碑が立っています。ただし碑文には2・26事件のことは書いておらず、ただ昭和11年2月に亡くなったとだけしか刻まれていません。あまりに痛ましい死で、遺族の方が、その事実を石碑にまで残したくはなかったのかもしれません。ただ私としては、襲われた側が不名誉であるかのような印象も、感じてしまったのです。

 それで被害者側から事件を描きたいというのが、最初の思いでした。その後、編集者と相談した時点で、巻き込まれた人というくくりで5人の主人公を決めました。

 ただし連載が始まってみると、「猫と漱石と悪妻」「家康の母お大」「女城主」のアンソロジーの中編などと同時並行になり、きつきつ状態。自分でも、いつ書いたのか記憶がないくらいです。

 しかも旧満州やサンフランシスコにまで取材に行き、単行本の校正ギリギリになっても、ちょっとしたことを確かめに、麻布の外交史料館や市ヶ谷の防衛研究所に足を運んだり。こんな手間ひまかけた本は、もしかしたら初めてかもしれません。

 装画と装丁デザインがとても素敵で、いい雰囲気になりました。2・26事件は血なまぐさい印象がありますが、家族の視点を加えた作品です。まして苦労して出したので、いつになく愛おしい本です。ぜひ、お買い求めを!

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  • 2017.10.13 Friday
  • 06:45
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    コメント
    先生の「人を殺さなかった人」「歴史に埋もれてしまった人」という精神が凝縮した本ですね。この事件をほとんど知りませんでしたが、文章に触れてこの時代背景を感じる事が出来ました。是非、手に入れたいと思っております。
    • ツユクサ
    • 2017/02/02 9:40 AM
    編集者から「ぜんぶ読んだ時に、2・26事件って何だったかがわかるように」という注文を受けまして、それもクリアできたと思います。いつも買っていただいて嬉しいです。
    • 三十里
    • 2017/02/03 1:57 AM
    もうすぐ2月26日ですね。
    岡田啓介、鈴木貫太郎、秩父宮まで一気に読みました。
    タカさんが泣かせますね。
    続きを読まねば!
    • 鐵五郎
    • 2017/02/08 11:39 AM
    この本は、読む人によって、好みの章が変るかも。私は5章が好きだけれど、3章がいいという人もいるし。
    • 三十里
    • 2017/02/09 10:25 PM
    縁あってこの本に出会い、憲法記念日に読みました。「大正の后」にも通じるものがあります。とっても感動しました。今の日本は、愚かな総理と、この本にも出てきたとんでもない副総理(私は岡崎市民です)がいて、悪い方向に進んでいます。今後がとっても心配です。
    • IKKI
    • 2017/05/03 1:54 PM
    IKKIさん、読んでいただいて、また気に入って頂けて、とてもうれしいです。憲法も変わるようですし、どうなるのかなあと思います。
    • 三十里
    • 2017/05/03 4:05 PM
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